アスレチックリハビリテーション
ケガの予防と対処に入念な対策を図ると個人及びチームをよい結果に導くことが出来ます。
ケガを予防するためにはトレーニングにより強靭な体をつくるのが大前提です。
さらに体力作りの基本である食生活。試合中に集中力が途切れない様にメンタル面をベストに保つため
日常生活まで把握することも重要です。よいアドバイスを心がけています。
例)膝前十字靭帯損傷・手術後プログラム
1.手術後1~2週目
歩行時の荷重:両松葉杖にて体重の1/3~1/2まで膝関節にあまり負担のかからないメニューを行います。主に膝関節周囲筋への刺激と関節可動域の拡大が目的となります。
① Quad setting(5秒15回、5~10セット)→枕を膝下に置き、下方へつぶす。
②SLR (15回、5~10セット)→膝を伸ばしたまま脚を挙上
③4動作→①3秒Quad setting⇒②SLR⇒3秒維持⇒③ゆっくり降ろし①の位置を3秒維持⇒④ゆっくりと開始位置へ戻す。
※手術後2週目から開始。当初無負荷にて行う。
④ 股関節伸展(15回、5~10セット)→うつ伏せで、膝を伸ばしたまま脚を挙上
⑤ 股関節内転(5秒15回、5~10セット)→枕またはボールを大腿部にはさみ、閉じる。
⑥ 股関節外転(15回、5~10セット)→大腿部にチューブを巻き、外に開く
⑦ ヒールスライド(関節可動域訓練)→踵をつけたまま膝を屈伸させる。
⑧ 低周波電気刺激(15分1セット)
⑨ アイシング→トレーニング後は、アイスバックなどで15~20分患部を冷やす。
⑩ 患部外トレーニング→健側脚や上半身のトレーニング。
2. 手術後2~3週目
歩行時の荷重:片松葉杖にて体重の2/3~(全荷重は3週目を目安とする)
手術後2~3週では1のメニューに追加して以下の項目を行います。①レッグエクステンション(膝関節伸展)→15~20回、5~10セット
※チューブにて膝に近い部分と足首の2ヵ所に抵抗を加える。(靭帯への負担を減少させるため)② レッグカール(膝関節屈曲)→15~20回、5~10セット
※チューブ抵抗は、足首部分1ヵ所。③ ホットパック、渦流浴(15分)
筋肉などの膝周囲の軟部組織を温めることで柔軟性を高める。トレーニング前に行うと効果的である。
(患部の腫脹、熱感が無くなった時点で行う。)
3.手術後3~4週目
半荷重~荷重位でのトレーニングの導入。2のメニューに追加して以下の項目を行います。また、退院はこの時期以降が望ましい。
① エアロバイク(50~100W、15分、1~2セット)
※当初ペダル回転数は50~60回転までとする。
② ハーフ・スクワット(15~20回、5セット位から)→初めは浅い角度(45度程度)から。
③ カーフレイズ(15~20回、5セット位から)
④ サイベックス(90~180deg/secまで)→デュアルシンパッド装着
※手術後1~1.5ヵ月以降から開始する。
4.手術後2~3ヵ月以降
① ウォーキング(KBW:knee bent walking)→健側比約60%以上に達したら開始する
KBWは、着地時の衝撃が少なく、通常の歩行よりも脚の筋活動が高い。
またランニングより足底の接地面が大きく安定しており、 まっすぐ接地し、まっすぐ蹴り出すというランニングフォームの矯正にもつながります。
※歩行上のポイント:股・膝関節を曲げたまま、重心の高さは一定に保つ。
顔は正面を向き胸をはり、つま先と膝が、同じ方向へ向くように踵から接地し、母趾球、母趾で蹴り出す。
② ジョギング(直線から):手術後3ヵ月程度から開始
③ 手術後3~4ヵ月以降:サイドステップなど横の動きを導入。練習の部分参加は4~5ヵ月、完全参加は5~6ヵ月、 競技復帰は6~8ヵ月が目安です。
また、手術後5~6ヵ月目でサイベックスによる筋力測定を行い、復帰の際の目安として用います。
「日本体育協会テキスト」より引用